新規事業のPOCで営業がうまくいかない時、多くの場合「戦略が悪いのか」「プロダクトが悪いのか」という議論になる。しかし見落とされがちな第三の要因がある。「誰に任せたか」だ。
本記事では、POC営業のアサインで陥りやすい3つの誤りと、正しい人材選定の考え方を整理する。
アサインの誤り①:社内で一番売れている人を選ぶ
直感的に合理的に見える判断だ。既存事業でトップの営業成績を持つ人材をPOCにアサインする。しかしこの選択が機能しないケースは多い。
既存営業とPOC営業は別の仕事だ。既存事業で売れている人は、確立された市場で確立されたプロダクトを効率的に売るスキルに長けている。商品知識、プレゼン力、クロージング力。これらは型が整った環境で威力を発揮するスキルだ。
POCでは型が存在しない。何を売るかすら確定していない段階で、顧客の課題を確かめ、仮説を検証し、結果を構造化する必要がある。営業経験の長さがPOCで役に立たないのは、経験の種類が合っていないからだ。
さらに、トップ営業を既存事業から引き剥がすコストも考慮すべきだ。既存事業の売上が落ちるリスクを取ってまでアサインしたのにPOCが進まなければ、二重の損失になる。
アサインの誤り②:新規事業の企画者にそのまま営業もやらせる
新規事業の起案者は、事業の背景やプロダクトの設計思想を最もよく理解している。だから営業も任せよう──この判断も危うい。
企画者が営業を行うと、商談が「説明と反応確認」で終わりがちだ。プロダクトへの思い入れが強い分、説明に時間を使い、顧客から行動事実を引き出す質問ができない。「いいですね」という反応を手応えとして持ち帰ってしまう。
企画者の知識はPOCにおいて重要な資産だ。しかしその知識を活かすのは営業の場ではなく、検証結果を分析しプロダクトの方向性を判断する場だ。営業の実行は、検証スキルを持つ別の人材が担い、企画者はその結果を受けて意思決定する。この役割分担が機能する。
アサインの誤り③:「誰でもいいからとりあえず」で決める
最も多いのがこのパターンだ。社内で手が空いている人、新規事業に興味を持っている若手、異動してきたばかりの人。「とりあえず」でアサインした結果、3ヶ月後に何も進んでいないことに気づく。
POC営業は、5つの条件を一定水準で満たす人材でなければ機能しない。型を作る力、行動事実を引き出す力、自走力、構造化する力、ブレイクスルーの経験。すべてを完璧に満たす必要はないが、少なくとも「型を作る力」と「自走力」は必須だ。
「手が空いているから」は、人材選定の基準にならない。POCは事業の成否を左右する検証活動であり、その実行者の選定は経営判断の一部だ。
正しいアサインの判断フロー
アサインの判断は以下の順序で行う。
まず、社内にPOC営業の適性を持つ人材がいるかを確認する。過去に新規事業やスタートアップでの営業経験がある人材、型がない環境で自走した経験を持つ人材を探す。
いる場合は、その人材の既存業務との兼ね合いを確認する。既存業務と兼務ではPOCに十分な時間が割けない。専任、または最低でも業務時間の7割以上をPOCに充てられる体制を作る。
いない場合は、外部人材の活用を検討する。内製にこだわって検証が進まない3ヶ月より、外部の力で検証を前に進める3ヶ月の方が、事業にとっての価値は大きい。
いずれの場合も、アサインした人材には「POCの目的は売ることではなく確かめること」を明確に伝える。評価基準も受注件数ではなく検証の質で設定する。この前提がなければ、どれだけ適切な人材をアサインしても、既存営業と同じ動き方をしてしまう。
まとめ
- 社内トップ営業=POC適任ではない──既存営業のスキルとPOCで必要なスキルは異なる
- 企画者に営業もやらせない──企画の知識は検証結果の分析に活かし、営業実行は別の人材が担う
- 「とりあえず」のアサインは最も高くつく──POC営業の適性を持つ人材の選定は経営判断の一部
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