社内公募で新規事業が採択された。アイデアは磨かれ、事業計画も承認された。プロトタイプも形になった。あとは顧客を獲得するだけだ。しかし、ここで事業が止まる。

社内公募で立ち上がった新規事業が営業フェーズで失速するケースは多い。本記事では、その構造的な原因と対処法を整理する。

なぜ社内公募の事業は営業フェーズで止まるのか

原因①:起案者に営業の経験がない

社内公募で手を挙げるのは、技術者やR&D部門の研究者、企画職のメンバーが中心だ。彼らは技術力や発想力に優れており、プロダクトのコンセプト設計やプロトタイプ開発には強い。

しかし営業経験がほとんどない。顧客にアプローチする方法がわからない。商談の進め方がわからない。商談が「説明と反応の確認」で終わってしまい、検証が前に進まない。

これは起案者の能力不足ではない。営業は別のスキルセットを必要とする専門領域であり、技術や企画の延長線上にはないからだ。

原因②:営業を「自分でやるもの」だと思い込んでいる

社内公募の文化では「自分で起案したものは自分で推進する」という暗黙の前提がある。企画も開発も営業も、起案者が一人でやることが期待されている場合が多い。

しかし、新規事業の営業を「誰に任せるか」は事業の成否を左右する判断だ。起案者が最も価値を発揮できるのは、事業の方向性を判断し、プロダクトを改善する意思決定の場であり、必ずしも営業の現場ではない。

営業を自分でやるべきか、別の人材に任せるべきかを冷静に判断することが必要だ。

原因③:既存の営業部門に頼れない

「自分でやれないなら営業部門に頼もう」と考えるが、既存営業部門はPOCの営業に構造的に対応できない。既存商材の営業に最適化された評価制度とプロセスの中で、新規事業の不確実な営業に時間を割くインセンティブがない。

結果として、起案者が一人で営業を抱え込み、技術開発と営業活動を並行して進めようとして、どちらも中途半端になる。

原因④:営業の「壁」を事業の「限界」と誤認する

営業がうまくいかない時、起案者は「この事業はやはりダメだったのではないか」と考え始める。しかし実際には、事業の可能性と営業の質は別の問題だ。

プロダクトは市場に合っているが、営業の進め方が適切でないだけかもしれない。売れない原因が営業力なのかプロダクトなのかの切り分けができないまま、「この事業は成り立たない」と結論づけてしまう。

本来は検証で確かめるべき問いを、感覚で判断してしまっている。これが、有望な事業を早期に潰してしまう最も痛い失敗パターンだ。

対処法:営業機能を事業設計に組み込む

社内公募の事業が営業フェーズで失速しないための対処法は、営業を「ついでにやること」ではなく「事業の中核機能」として設計に組み込むことだ。

対処①:起案段階で営業の設計を含める

事業計画書にプロダクト設計と並ぶ重要項目として、営業の設計を含める。誰が営業を担うのか。社内か外部か。どのような検証プロセスで進めるか。成功基準と撤退基準は何か。

これらが事業計画の段階で設計されていれば、営業フェーズに入ってから慌てることはない。

対処②:営業の適任者をアサインする

起案者が営業を兼務するのではなく、POC営業に適した人材を別途アサインする。社内にいなければ外部人材を活用する。

起案者は事業の方向性判断とプロダクト改善に集中し、営業の実行は専門の人材が担う。この役割分担が、事業全体の検証速度を上げる。

対処③:営業フェーズを「検証活動」として位置づける

営業フェーズを「売る活動」ではなく「仮説を検証する活動」として位置づけ直す。この認識の転換があるだけで、起案者の心理的負担は軽くなる。

「売れなかったらどうしよう」ではなく「何がわかるだろう」という姿勢で営業活動に向き合える。そして検証の結果が、事業計画の修正や次のステップの判断に使える材料になる。

まとめ

  • 社内公募の起案者は技術・企画に強いが営業経験がない──営業は別のスキルセットであり、兼務には限界がある
  • 営業を「ついでにやること」ではなく事業の中核機能として設計する──起案段階で営業の体制・プロセス・基準を計画に含める
  • 営業の壁を事業の限界と誤認しない──売れない原因が営業なのかプロダクトなのか、検証で切り分ける

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