仮説検証型セールスのStep 1は「課題は実在するか」の検証だ。しかし「課題を検証する」と言われても、具体的に何をすればいいのかわからない担当者は多い。
結論から言えば、課題の検証とは「想定している顧客課題が、対価を払うに値するレベルで存在しているか」を行動事実で確認する作業だ。本記事では、その具体的な手順を整理する。
課題の検証で確かめるべきは3つだけ
課題の検証で確認すべき要素は3つに絞られる。
一つ目は、課題の認知だ。ターゲット企業がその課題を自覚しているか。課題として認識していなければ、解決策を提示しても響かない。
二つ目は、課題の深刻度だ。認識しているだけでなく、対処のために時間・人員・費用を投下しているか。「困ってはいるが放置している」課題と「毎月工数をかけて対処している」課題では、解決策への需要が全く異なる。
三つ目は、課題の頻度だ。年に一度しか起きない問題と、毎週発生する問題では、緊急度が違う。頻度が高いほど、解決策に対価を払う動機が強い。
この3つが揃えば「課題は実在し、対価を払う水準にある」と判定できる。逆に一つでも欠ければ、解決策の検証に進むのは時期尚早だ。
具体的な検証の進め方
Step 1:ターゲットリストを作る
まず、想定するターゲット企業を15社程度リストアップする。業種・規模・部門をある程度揃えた方が、結果の比較がしやすい。
15社という数は目安だが、少なすぎると偏りが出る。5社では「たまたまこの5社だけが課題を持っていた」可能性を排除できない。
Step 2:ヒアリングを実施する
初回商談で聞くべき3つの質問を使って、行動事実を集める。
この段階では、自社のプロダクトや解決策の話は一切しない。純粋に課題の有無とその深刻度だけを確認する。解決策を先に見せると、相手の回答が解決策に引きずられ、課題そのものの実態が見えなくなる。
商談の冒頭は「御社の〇〇領域における現状を伺いたい」と切り出す。プロダクトの紹介ではなく、業界研究やリサーチの文脈で切り出す方が、相手も率直に話しやすい。
Step 3:結果を集計して判定する
15社のヒアリング結果を、3つの要素(認知・深刻度・頻度)で整理する。
認知について。15社中何社が、この課題を自社の言葉で語れたか。「言われてみればそうかもしれない」ではなく、「まさにそこが問題で」と自発的に課題を語った企業が何社あるか。
深刻度について。課題を認識している企業のうち、何社が対処のためにコストをかけているか。具体的な金額や工数が確認できた企業は何社か。
頻度について。課題が直近3ヶ月以内に発生した事実がある企業は何社か。発生頻度が月1回以上の企業は何社か。
判定基準の設計例
事前に設定した成功基準と照合して判定する。例えば以下のような基準が考えられる。
認知の基準。15社中10社以上(67%以上)が、この課題を自社の具体的な業務課題として認識している。
深刻度の基準。課題を認識している企業のうち、8社以上で年間50万円以上の対処コスト(人件費含む)が確認できている。
頻度の基準。課題が直近3ヶ月以内に発生した事実がある企業が、認識企業のうち7社以上。
3つの基準すべてを満たせば、Step 2(解決策の受容性の検証)に進む。いずれかが未達であれば、ターゲットの変更、課題定義の修正、または追加ヒアリングを検討する。
よくある失敗パターン
失敗①:課題検証をスキップして解決策の話をする
最も多い失敗だ。「うちのプロダクトは良いものだから、課題は当然ある」という前提で解決策の提案に入ってしまう。結果として、課題を感じていない企業にプロダクトを説明し続け、「いいですね」と言われるが進まない状態が続く。
失敗②:意見を事実と混同する
「そういう課題はあると思います」という回答を、課題の実在の証拠として扱ってしまう。意見は検証材料にならない。「思います」ではなく「実際にこういうことが起きた」「こうやって対処している」という事実を確認する。
失敗③:少数の強い反応に引きずられる
15社中2社だけが「まさにそれが問題だ」と強く反応した場合、その2社の声に引きずられて「課題は確認できた」と判断してしまうことがある。2社の反応は貴重な情報だが、残り13社の反応が薄いなら、市場全体では課題の認知度が低い可能性がある。少数の例外ではなく全体の傾向で判断する。
課題が確認できなかった場合
課題の実在が確認できなかった場合、それは失敗ではない。「この方向の課題は、想定ほど深刻ではない」という検証結果だ。
この結果を受けて、ターゲット企業の業種や規模を変えて再検証するか、課題の定義自体を見直すか、撤退するかを判断する。いずれの判断も、ファクトに基づいている限り合理的な意思決定だ。
まとめ
- 課題の検証で確かめるのは認知・深刻度・頻度の3つ──この3つが揃えば「対価を払う水準の課題」と判定できる
- 解決策の話は課題検証が完了するまでしない──先に見せると、課題の実態が見えなくなる
- 全体の傾向で判断する──少数の強い反応に引きずられず、15社中何社で事実が確認できたかで判定する
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