「こういう機能があったら使いたいですか?」「こんなサービスがあればいくら払いますか?」──商談やインタビューでよく使われる質問だ。そして、ほぼ確実に「はい」が返ってくる質問でもある。

この「はい」を信じて開発を進め、いざリリースすると誰も使わない。この失敗パターンには明確な構造がある。本記事では、仮定の質問がなぜ検証にならないのか、その理由と対処法を整理する。

仮定の質問に「いいえ」と答える人はいない

「もしこういう機能があれば使いますか?」という質問に対して、「いいえ、使いません」と答える人は極めて少ない。

理由は3つある。

一つ目は、社会的な配慮だ。目の前でプロダクトの説明を受けた相手に対して、正面から否定する人はBtoBでもBtoCでも少数派だ。特に日本のビジネス文化では、相手の提案を好意的に受け止めることが礼儀とされる。

二つ目は、仮定の質問にはコストがかからないことだ。「使いたいですか」に「はい」と答えても、お金を払う義務は生じない。契約書にサインするわけでもない。コストゼロの回答だから、気軽に「はい」と言える。

三つ目は、想像と現実のギャップだ。「あれば便利そう」と想像することと、「予算を確保し、社内を説得し、既存のやり方を変えてまで導入する」ことの間には、巨大な距離がある。仮定の質問はこの距離を測定できない。

意見と行動事実の決定的な差

「いいですね」と言われるのに商談が進まない現象の根本原因がここにある。仮定の質問で得られるのは意見であり、行動事実ではない。

意見とは「こうだったらいいな」という願望の表明だ。行動事実とは「実際にこうした」という過去の行動の記録だ。

「こんな機能があれば月5万円払います」は意見だ。「この問題を解決するために、昨年外部のサービスに120万円払った」は事実だ。

前者からは何も検証できない。後者からは「この課題にはすでに年間120万円の対処コストがかかっている」という検証材料が得られる。同じヒアリングの時間を使っても、得られる情報の価値が全く異なる。

なぜこの質問をしてしまうのか

仮定の質問が検証にならないことは、論理的には理解できるだろう。しかし実際の商談では、多くの人がこの質問を使い続ける。その理由は2つある。

一つ目は、プロダクトの話をしたくなるからだ。自社のプロダクトに思い入れがある担当者ほど、商談の場で「こんなことができます」と説明し、相手の反応を確かめたくなる。「使いますか?」は、プロダクトの説明の延長線上で最も自然に出てくる質問だ。

二つ目は、肯定的な反応が欲しいからだ。社内向けに「顧客の反応は良好」と報告するためには、「いいですね」という声を集める必要がある。仮定の質問はその声を最も効率的に集められる方法だ。しかし効率的に集めた「いいですね」は、効率的に無価値なデータを積み上げているに過ぎない。

仮定の質問を行動事実の質問に置き換える

仮定の質問を行動事実の質問に置き換える方法は、検証精度を上げる質問設計の記事で詳しく述べた。ここではポイントだけを整理する。

「もしこの機能があれば使いますか?」を置き換えるなら、以下のようになる。

「この領域で、直近で困ったことはいつありましたか?」──課題の発生時期と頻度を事実で確認する。

「その時、どう対処しましたか?」──代替手段の有無と、課題への対処コストを事実で確認する。

「その対処に、どのくらいの時間やコストがかかりましたか?」──対価の妥当性を推定するための事実を得る。

これらの質問は仮定を含んでいない。すべて過去と現在の事実を聞いている。この事実が確認できれば「お金を払ってでも解決したい課題が実在する」と判定でき、それは仮定の質問で100回「はい」を集めるよりも価値がある。

商談の最初の10分が勝負

仮定の質問をしてしまうのは、商談の冒頭でプロダクトの説明から入るからだ。説明すれば、反応を確かめたくなる。反応を確かめようとすれば、仮定の質問になる。

この流れを断ち切るには、商談の最初の10分を「質問の時間」に設定することだ。プロダクトの説明は後にする。まず行動事実を聞く。

「本日は、御社の〇〇領域における現状を伺いたいのですが」──こう切り出せば、自然に事実ベースのヒアリングに入れる。プロダクトの話は、事実を十分に聞いた後で、その事実に合わせて行えばよい。

順序を変えるだけだ。しかしこの順序の違いが、検証の質を根本的に変える。

まとめ

  • 仮定の質問に「いいえ」と答える人はいない──コストゼロの「はい」は検証材料にならない
  • 意見ではなく行動事実を聞く──「使いますか?」ではなく「いつ困りましたか」「どう対処しましたか」
  • 商談の最初の10分を質問の時間にする──プロダクト説明より先に事実を聞く順序が、検証の質を決める

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