「POC営業を始めたいが、何人体制で始めればいいかわからない」──新規事業の立ち上げ段階でよく出る問いだ。

大人数を張り付ける余裕はない。しかし一人では検証と報告の両立が難しい。本記事では、POC営業の最小構成と、検証フェーズに適した体制の設計方法を整理する。

最小構成は「営業実行者+事業判断者」の2名

POC営業の最小構成は2名だ。営業を実行する人と、検証結果をもとに事業の方向性を判断する人。この2つの役割は兼務させない方がよい。

営業実行者の役割

商談の実施、行動事実の収集、商談記録の構造化、定例報告の作成。現場で動き、データを持ち帰る役割だ。

POC営業の5つの条件を一定水準で満たす人材をアサインする。社内に適任者がいなければ外部人材を活用する

事業判断者の役割

検証設計の策定、成功基準の設定、検証結果の分析、前進・ピボット・撤退の判断、経営層への報告。事業の方向性を決める役割だ。

多くの場合、新規事業の企画者や責任者がこの役割を担う。プロダクトの背景や事業の全体像を最も理解している人間が適任だ。

なぜ兼務しない方がいいのか

営業実行と事業判断を一人で行うと、客観性が失われる。自分で商談して自分で判断すると、感覚的な判断に陥りやすい。「手応えがあった」という自分の感触を、自分で検証結果として採用してしまう。

実行者と判断者を分けることで、「現場ではこう見えている」と「データからはこう判断すべきだ」を突き合わせる構造が生まれる。この緊張関係が検証の質を上げる。

各フェーズで体制をどう変えるか

Step 1(課題検証):2名で十分

課題検証では、ヒアリングを行う営業実行者1名と、結果を分析する事業判断者1名の最小構成で回る。ヒアリングに複雑なプロダクト知識は不要なため、営業実行者の立ち上がりも早い。

Step 2(解決策検証):必要に応じてプロダクト担当を追加

解決策のコンセプトを提示する段階では、技術的な質問に答えられる人材が必要になることがある。プロダクト開発の担当者を商談に同席させるか、営業実行者にプロダクトの知識をインプットする。

常時参加する必要はなく、必要な商談にスポットで参加する形で十分だ。

Step 3(対価検証+型の実装):引き継ぎ先を加える

Step 3に進んだ段階で、将来的に営業を引き継ぐ社内メンバーを体制に加える。営業実行者の商談にオブザーブとして同席し、型を学ぶ。

この段階で体制は3〜4名になるが、全員がフルタイムで関わる必要はない。営業実行者がフルタイム、事業判断者とプロダクト担当が週数時間、引き継ぎメンバーが商談同席のみ。

体制を拡大するタイミング

POCフェーズで体制を急いで拡大する必要はない。拡大のタイミングは、検証で勝ち筋が確認できた後だ。

具体的には、Step 3で対価の意思が確認できた企業が成功基準を満たし、本格展開の判断が下された時点。このタイミングで営業メンバーを増やし、型のトレーニングを実施する。

検証が完了する前に人数を増やすと、型が固まっていないまま複数人が異なるやり方で営業を行うことになる。結果がバラつき、何が有効で何が有効でないかの判断がさらに難しくなる。

よくある体制設計の失敗

失敗①:営業部門から人数だけ借りる

既存営業部門のメンバーは構造的にPOCに対応できない。人数を増やしても、一人ひとりが既存営業の動き方をするだけで、検証は前に進まない。

失敗②:企画者が全部やろうとする

企画者が営業も兼務すると、どちらも中途半端になる。企画者は事業判断に集中し、営業実行は別の人材に任せる。

失敗③:最初から大きな体制を組む

POCの段階で5名以上の体制を組むのは過剰だ。人数が多いとコミュニケーションコストが増え、意思決定が遅くなる。最小構成で速く回し、検証結果が出てから拡大する。

まとめ

  • 最小構成は営業実行者+事業判断者の2名──兼務させず、実行と判断を分けることで検証の客観性を担保する
  • フェーズに応じて必要な人材をスポットで追加する──常時フルタイムではなく、必要な場面で参加する形
  • 体制拡大は勝ち筋の確認後──型が固まる前に人数を増やすと検証がバラつく

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